心療内科の戸を叩く
その夏以降、わたしの体調は悪化の一途を辿っていました。
食欲不振も酷くなる一方で、血糖は安定せず
点滴と砂糖入り紅茶で
なんとかしのいでいました。
その頃、「身体が浮いてしまう感覚」に加えて
唐突に身体がビクッとしたり
心がハッとすることが起こり始めていました。
急いで手近にある椅子やテーブルを掴んで力を込め
なんとか我を取り戻すという状態
そんな状態を
なにかがおかしいと思ってはいましたが
家族にも、うまく説明ができませんでした。
浪人生になったわたしは
しんどいながらも
毎日予備校へ通っていました。
5月のある日
最寄り駅から特別快速の電車に乗った後
それは起こりました。
息が出来ない、苦しい!
降りたい、降ろして!
しかし特別快速は
6つ先の駅まで止まりません。
身体が浮く、つり革を握りしめ、
冷や汗、涙目、荒い呼吸、
助けてと言いたいのに声が出ない
密閉された電車内で不穏な動きをするわたしに
不審な目を向ける人はいても
声をかけてくれる人はいませんでした。
死にそうな思いで約10分を耐えて
次の停車駅で開いた扉から
落ちるように外へ出ました。
しばらくして
飛んできてくれた母を見て、泣きました。
その日以来
予備校には通えなくなりました。
バナナとお豆腐以外の食べ物を
受け付けなくなりました。
当時の母のパート先だった耳鼻科の医師から
最近出来たばかりという
近所の「心療内科」を紹介されました。
今起こっているすべては
食べられないことからだよね、
だから「内科」だよね、
そしてちょっと心も不安定だよね、
だから「心療内科」なんだよね、
という認識でした。
心療内科につくと、診察より前にまず
心の質問がずらりと並んだ「心理検査表」を渡されました。
医師の診断は 「抑うつ状態」
その日から
抗うつ剤の服薬が、始まりました。
季節は、春を過ぎて、もう初夏。
早いなぁ。
ついこの間までコートを着ていたのに…
なんて言うようになったら
おばちゃんなのかな(笑)